第209章 親しくない、知らない

黒田奏多に約束をすっぽかされたせいで、橘芹奈の一日は最悪の気分で台無しになっていた。執務室に入るなり、まずは椅子に座って休みたい衝動に駆られる。

ところが、ドアを開けた瞬間、裏に隠れていた人々が一斉に飛び出してきた。彼らの手に握られたクラッカーが、パンッと派手な音を立てて弾ける。

橘芹奈はビクッと肩を震わせたが、すぐに先頭に立つ鈴木由佳利の姿を捉えた。

彼女は人だかりの中で満面の笑みを浮かべ、唇を噛み締めながら橘芹奈を見つめている。

「セリナ姐さん、また記録更新ですね! 史上初のグランドスラム達成、本当におめでとうございます!」

史上初のグランドスラム達成レーサーというだけでなく、...

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