第266章 時間が凍りつくこの一秒

黒田奏多はVIP病室へ移され、顔には人工呼吸器のマスクがつけられていた。

橘芹奈は、こんなにも脆い黒田奏多を見たことがなかった。血の気の失せた顔色は、次の瞬間にでも糸が切れてしまいそうで、見ているだけで胸の奥がざわつく。

「ひとまず危険は脱したんでしょう? なら、私もう帰っていい?」

芹奈がそう問うと、黒田奈緒子は横目で睨むように彼女を見た。

「救急を出ただけよ。まだ完全に安全じゃないのに、何をそんなに焦ってるの?」

橘芹奈をいじめることに関して、黒田奈緒子は一切の手加減をしない。

息子がつらい思いをしているなら、芹奈にも同じだけ味わわせる。そういう人間だ。

芹奈は待っていられ...

ログインして続きを読む