第277章 自らを救うのみ

にも、いちの剣幕にすっかり呑まれた。思わず首をすくめてしまう。

肝心な場面で、こいつまでさんと同じように間抜けをさらし、肩をすぼめたまま恐る恐るいちに言った。

「兄貴……俺、娘が家で待ってるんです。帰ったらって約束もしてて……K市の土産も買ってやるって――」

言い終える前に、いちが振り返り、にを睨みつけた。

「てめぇもバカか?」

橘芹奈の脚は、また縛り直された。

今度はさんがわざわざ縄をぐいっと引き、絶対にほどけないよう確かめる。

「私にも娘がいるの。五歳で、すごく可愛い子よ。あなたたちも見たことあるはず」

橘芹奈は声を柔らかくし、できるだけ敵意を消して交渉の形に持ち込もうと...

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