第4章

二人は連れ立って入ってきた。亜美は拓海の腕に絡みつき、ぴっちりした赤いドレスを身にまとっている。彼女の視線が部屋をさっと見渡し、私を捉えた。

そして、賢二を見つけた。

彼女の顔が、クリスマスの朝みたいにぱっと輝くのを私は見ていた。

「ねえ、拓海」亜美はわざとみんなに聞こえるような大声で言った。「あれって理奈の新しいクライアントじゃない? N市から来たっていう作家の」

拓海は気まずそうに何かを呟き、私のほうを完全に見ようとしなかった。

でも亜美は、私にはお馴染みの、あの甘ったるい作り笑いを浮かべて、ずかずかとこちらへ歩いてきた。「永井さん、ですよね? 私、羽鳥亜美です! 岬ヶ丘町へようこそ!」

彼女は手を差し出し、胸の谷間を見せつけるように身を乗り出した。

賢二は丁寧にお辞儀をしたが、その手は取らなかった。「どうも」そう言うと、彼は亜美がそこにいないかのように私の方を向き直し、会話の続きを促した。

亜美の笑顔がこわばった。彼女はさらに食い下がった。「どこに泊まってるんですか? 私が案内してあげますよ! いい場所、全部知ってるんです!」

「結構です」賢二の声は平坦だった。「理奈さんには、とてもよくしてもらっていますから」

まるで誰かが平手打ちされるのを見ているようだった。

亜美の顔が真っ赤に染まった。彼女はこわばった笑顔のまま拓海の方へくるりと向き直ると、吐き捨てるように何かを囁いた。拓海が彼女をなだめようとしたが、亜美の声は秒を追うごとに甲高くなっていった。

レストラン中の視線が突き刺さる。

それでも、初めて、私はどうでもいいと思った。だって、賢二は私の向かいに座り、まるで私たちの会話だけが世界で唯一意味のあることみたいに、私の話に完全に集中してくれていたから。

家までの帰り道、賢二はレンタカーで静かなジャズを流していた。

「君の義理の妹さん……強烈だね」彼は唐突に言った。

私は思わず笑いそうになった。「あの子はいつも、人が持っているものを欲しがるんです」

賢二がちらりと私を見た。「君の元カレも?」

あまりに直接的だった。私は凍りつき、何と答えたらいいか分からなかった。

車が私の家の前で停まった。ドアハンドルに手を伸ばしたとき、二階の窓に動く人影を捉えた。

亜美がそこに立って、賢二の車を見下ろしていた。

その目に宿るもの――渇望、嫉妬、そして何かを欲しがるときの彼女特有の恐ろしいほどの執念――に、私の血は凍った。

背筋に冷たいものが走った。

「送ってくれてありがとう」私は早口で言った。「また明日」

賢二は頷いた。「おやすみ、理奈さん」

彼の車のテールランプが見えなくなると、私は玄関ポーチに立ち、もう一度窓を見上げた。

亜美はまだそこにいた。でも、もう私を見てはいなかった。

彼女の目は、賢二が走り去った方向をじっと見つめていた。

賢二の質問は、いつも私を動揺させる。

「カップルが一番無防備になるのは、いつだと思う?」

私たちは私の事務所に座っていた。窓には小雨がぱらぱらと当たり、彼のペンがノートの上で止まっている。これが七回目の打ち合わせで、この二週間、私は自分が認めたくないほど、この時間を心待ちにするようになっていた。

「誓いの言葉を交わすときかな」私は考えながら言った。「『はい、誓います』って言った瞬間、彼らは自分の心を丸ごと相手に手渡すんだと思う」

賢二の表情が和らいだ。「お母さんの教え?」

私はためらった。いつの間にか、私は彼にこんな話をするのが心地よくなっていた。母のこと、私がこの仕事を継いだ理由――父でさえもう聞いてくれないような話を。

「母は言ってた。ウェディングプランナーの仕事は、会場を予約したり花を選んだりすることじゃないって」私は静かに言った。「人が完全に無防備になる、その瞬間を守ることなんだって」

外では雨足が強まり、ガラスを伝う水滴が通りの景色を滲ませていた。賢二が不意に言った。「俺がここに来たのは、N市の狂騒から逃れるためなんだ」

彼が自分のことを話すのは珍しかった。顔を上げると、その目に疲れたような色が浮かんでいるのが見えた。「あそこでは何もかもが速すぎて――周りにいる人間を、ちゃんと見ることさえ忘れてしまう」

それは、よく分かった。全力で走っているときには、崖から落ちるまでその崖が見えないことがある。

その日の午後、私は久しぶりに声を上げて笑った。挙式で百匹の蝶を放ちたいというカップルの話をしていて、お腹が痛くなるまで笑ったのだ。ここ何週間か、ただ生き延びているだけじゃなく、また人間らしい感情を取り戻せた気がした。

でも、いい時間は決して長くは続かない。

亜美と賢二の「ツーショット写真」を初めて見たのは、インスタグラムだった。その写真では、賢二は本を読んでいて、横顔に陽の光が当たっている。一方の亜美はぴちぴちのヨガパンツ姿で、ばかげた「考え事」のポーズを取っていた。

キャプションは、「町に新しいお友達ができた🌊 #夏 #新しい始まり」

画面の上で私の指が止まり、心臓が激しく打ち鳴らされた。コメント欄はすごいことになっていた。賢二がどれだけ素敵かと騒ぐ女の子たち、「二人は付き合ってるの?」という質問。

そこに、拓海のコメントを見つけた。「❤️」

一秒後、それは消えていた。

でも、私はもう見てしまった。

その後数日間、亜美のインスタグラムは賢二のストーキング日記と化した。「偶然」の出会いとやらが投稿される。本屋で、海沿いで、喫茶店で――彼女はいつも完璧に計算された服を着て、一番きれいに見える角度でポーズを決めている。一方の賢二は背景で、何も知らない小道具のように自分のことに没頭しているだけだ。

この手口には見覚えがある。前の人生で、彼女はまったく同じやり方で拓海を奪ったのだ。まず、二人がいつも一緒にいるという幻想を作り出し、やがてその幻想を現実に変えてしまう。

「理奈ちゃん、ちょっと」

郵便局のカウンターの向こうから中島さんが声をかけてきた。これからゴシップが始まる合図となる、田舎町特有のあの口調で。彼女の後ろに集まっていた女性たちがぴたりと話をやめ、一斉にこちらを向いてじっと見つめてきた。

その視線には見覚えがあった。憐れみと、好奇心と、そして他人の揉め事に対するほんのわずかな満足感。

「N市から来たあの男の人、気をつけたほうがいいわよ……」中島さんは国家機密でも打ち明けるかのように声を潜めた。

胃が締め付けられた。「賢二さんのことですか? 彼が何か?」

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