第6話 最終対決

私は声を張り上げ、もう一度呼びかけた。

「陸!」

渡辺絵美はまだ学会発表の話を夢中で続けていて、私の存在に全く気づいていない。だが、陸はぴたりと足を止めた。私の声を聞いた瞬間、彼は渡辺絵美の手を乱暴に振り払い、よろめいた彼女を気にも留めず、まるで獲物に忍び寄る捕食者でも見るかのように、私の方へぐるりと向き直った。

私の前に立つ渡辺絵美は、どこからどう見てもおどおどとした大学院生だった。陸に近づきたいのに、その勇気もないといった様子で一歩引いている。その立ち振る舞いすべてが、教授や男性の同僚にはおそらく効果的なのだろう、庇護欲を掻き立てる無力さをこれでもかと訴えかけていた。

心...

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