第6話 最終対決
私は声を張り上げ、もう一度呼びかけた。
「陸!」
渡辺絵美はまだ学会発表の話を夢中で続けていて、私の存在に全く気づいていない。だが、陸はぴたりと足を止めた。私の声を聞いた瞬間、彼は渡辺絵美の手を乱暴に振り払い、よろめいた彼女を気にも留めず、まるで獲物に忍び寄る捕食者でも見るかのように、私の方へぐるりと向き直った。
私の前に立つ渡辺絵美は、どこからどう見てもおどおどとした大学院生だった。陸に近づきたいのに、その勇気もないといった様子で一歩引いている。その立ち振る舞いすべてが、教授や男性の同僚にはおそらく効果的なのだろう、庇護欲を掻き立てる無力さをこれでもかと訴えかけていた。
心...
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チャプター
1. 第1話 見知らぬ人の呼び声
2. 第2話 記憶の欠片
3. 第3話 壊れた記憶
4. 第4話 彼を信じていた
5. 第5話 反撃

6. 第6話 最終対決

7. 第7話 あなたには関係ない

8. 第8話 あなたにはがっかりした

9. 第9話 謝罪を要求する


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