第8章
春川真希視点
「もう裕也とは関わりたくないの」私は電話に向かって言う。「だからブロックしたんだから」
裕也の声は大きくて、苛立っている。「ふざけるなよ、真希。何年も執着してた相手を、そう簡単にブロックするわけないだろ」
「いいか、二日後は俺の誕生日だ。気の利いたプレゼントでも持ってきて、最近のそのクソみたいな態度を謝るなら、許してやってもいい」彼の声が、あの嫌な自信過剰な調子になる。「今度こそ、俺たちの関係を真剣に考えてやってもいいぜ」
笑ってしまいそうになる。今になってもまだ、私が駆け引きしていると思ってるんだ。ふざけないで、と言いかけたその時、賢治が身を乗り出して私の耳に囁い...
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チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
8. 第8章
9. 第9章
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