第9章

春川真希視点

「なんなんだよ、これ」裕也の声が上ずった。

「言っただろ」賢治は冷静に言った。「真希は俺の彼女だ」

裕也は私と賢治を交互に見た。「冗談だろ? なんかの……仕返しとか、そういうやつか?」

「冗談じゃない」私は賢治に一歩寄り添いながら言った。「私たちは、付き合ってるの」

その瞬間、裕也は完全にキレた。

「付き合ってる?」裕也は笑ったが、その声は狂気を帯びていた。「誰がそんなこと信じるかよ。賢治が本気で、何年も俺にまとわりついてた哀れな養子の孤児なんかと付き合いたがると思うか?」

部屋は水を打ったように静まり返った。隣で賢治の体がこわばるのを感じたが、裕也はまだ言...

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