第7章
早朝の静寂を電話のベルが突き刺した。眉をひそめて電話に出ると、受話器の向こうから、いつもより緊張した鹿野の声が聞こえてきた。
「若菜様、藤原の若様が……指を詰めてお詫びを」
電話を握る指に微かに力が籠もる。だが、感情は一切表に出さなかった。極道の世界において、指詰めは最も伝統的な謝罪の作法であり、究極の懺悔と臣従を意味する。
「一家の会合で、藤原の若様が感情を抑えきれず、長老たちに無礼な口を利いてしまいまして。組の掟に従い、指を詰めることになりました」
鹿野の声が少し低くなる。
「儀式の後、若様は手当を拒んでおり、ずっと若菜様のお名前を……。このままでは感染すると医者も」
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