第1章

午前2時半。忌々しい使い捨て携帯がまた鳴った。

私は目を開け、天井の亀裂を睨んだ。不眠症はこの仕事の副作用だ。血の匂いへの無感覚、人間性への不信感と一緒にな。

闇の中で、携帯の画面が青白く光る。暗号化されたメッセージ。三十秒で自動消去される設定だ。

『優先案件。新澤市、青峰、山通り47番地。VIPクライアント。報酬1500万円。受諾?』

ナイトスタンドに置かれた母の写真に目をやった。色褪せた一枚。フレームの後ろにはロザリオが隠してある。母がその朝、床に散らばった薬瓶の中で、手に握りしめていたものだ。

「また金持ちが罪の後始末を必要としてる」私は写真に囁きかけた。「そして、その罪を消してやるのが私の仕事なんだ、母さん」

私は『受諾』をタップした。

二十分後、私の古い軽自動車は寂れた新倉南区を滑り出した。トランクには装備が満載だ――不織布製の防護服、特殊洗浄剤、紫外線ライト、暗号化カメラ。

この仕事を始めて三年になる。影桜社――金持ちどもが手に負えなくなった『事故』の後始末をする会社――のために、犯罪現場を清掃する。一件あたりの報酬は500万から2000万円。食っていくには十分だ。

青峰。富裕層が住む高級住宅街で、家の価格は最低でも8億円からだ。私の世界は二つに分かれている。昼間は時給1200円のコインランドリー、そして夜は血に染まったこれらの犯罪現場。

ゲートは私が到着する前に自動で開いた。

地下ガレージの照明が目に痛い。深呼吸する。血の匂いが、シャンパンと薬品の匂いに混じって階上から漂ってきた。

この組み合わせの匂いは、もう何度も嗅いできた。金持ちのパーティー――酒、ドラッグ、セックス、そして死。奴らは命を使い捨ての玩具のように扱う。

防護服、マスク、ゴーグル。鏡の中の私は、匿名的で、感情のない、異星人のようになった。完璧だ。

道具箱を掴み、階段を上がる。室内プールで目にした光景に、私は一瞬、足を止めた。

水はワインのような深い赤色をしていた。いや、ワインよりもっと濃い。血だ。大量の血。

プールの真ん中に、一体の死体が浮かんでいた。若い女だ。うつ伏せで、黒い髪が水面に広がっている。引き裂かれた黒のイブニングドレス。むき出しになった白い背中は、いくつもの痣で覆われていた。

プールサイドは惨状だった。砕け散ったシャンパンのボトル、血痕、散らばった白い粉末。そして、片方だけの赤いソールのハイヒール。

リビングでは、四人の男が気怠そうに葉巻を吸っていた。高価そうな普段着を身につけ、ウイスキーを飲み、経済ニュースを眺めている。すぐ近くに死体があることなど、まるで気にも留めない様子で。

リーダー格の男が振り返った。

「早いな」男は僅かに関西訛りのある声で言った。「影桜がお前を最高だと言っていた」

心臓が跳ねた。

この男を知っていた。

森田蓮司。二十七歳、森田家の跡継ぎ。私の昼間の仕事場のボス、森田敏夫の甥だ。毎週コインランドリーに「視察」に来ては、従業員を怒鳴りつけているあの男。

だが、向こうは私に全く気づいていない。防護服は体型を隠し、マスクとゴーグルが顔を覆い、私は意図的に声を低くした。

「現場を確認させてもらいます」私は冷静な、プロの声で言った。「見積もりはその後で」

蓮司は手を振った。「どうでもいい。さっさと終わらせろ」。まるで出前の相談でもしていたかのように、彼はソファに向き直った。

私はプールへと歩いた。一歩一歩が妙に重く感じられた。

懐中電灯で水面を照らす。死体がゆっくりと半回転した。

顔が見えた。

私は完全に凍りついた。

照井加奈だった。

森田クリーニングの常連。毎日私の安物の服を嘲笑い、わざと汚れたタオルを顔に投げつけ、「負け犬」と呼んだ女。

今、彼女はこの血のプールに浮かび、顔は痣だらけになっている。

私は無理やり体を近づけ、プロの目で検分した。

首には深い絞殺痕――まず絞め殺され、それからプールに投げ込まれた。

手首には防御創――彼女は抵抗した。

ドレスは暴力的に引き裂かれている――典型的な、性的暴行の後の殺人だ。

「おい!」リビングから蓮司が叫んだ。「いつまでかかる?こっちはパーティーの続きがしたいんだが」

振り返る。四人の男たちは、新しいシャンパンと薬物を用意していた。プールのそばで。死体のすぐ横で。

洗浄剤のボトルを握る指に力がこもり、関節が白くなった。

だが私はただ振り返って言った。「四時間です」

蓮司が歩み寄ってきてプールサイドに立ち、加奈の死体を見下ろした。

「パーティーで羽目を外しすぎたのさ」天気の話でもするかのような口調だった。「自分で摂取した薬物の量に耐えられなかったんだろ」

仲間の一人――金髪の若い男――が笑った。「ああ、イカれてたな。私たちと遊べるタマじゃなかったってことだ」

別の男が付け加える。「こういう女は、いつも自分を過信する」

私は奴らを見ていた。その顔に浮かぶ、罪悪感の欠片もない表情を。

蓮司が私に向き直った。「全部綺麗にしろ。すべてだ。プール、デッキ、カメラ。何もなかったかのように見せろ」

彼は一拍おいて、煙草に火をつけた。「それからこの女を片付けろ。私の家が臭くなる」

私はただ頷いた。

「値段は?」と蓮司が訊いた。

私は背筋を伸ばした。「プールと死体処理で1500万円。デジタルデータの消去――監視カメラ、携帯、クラウドのバックアップ、その他諸々で、追加500万円。合計2000万円です」

蓮司はためらいもしなかった。「いいだろう」と彼は言った。「時間は?」

「四時間。あなた方にはここを出てもらいます。作業中は目撃者を置くわけにはいきません」

蓮司は感心したように私を見た。「プロだな。気に入った」

「クライアントを失望させたことはありませんので」

SUVのエンジン音が遠ざかっていく。屋敷はようやく静寂に包まれた。

残されたのは、私と、加奈の死体だけ。

「お前はランドリーで毎日私を負け犬と呼んだな」私はプールサイドに立ち、浮かぶ死体を見つめ、静かに語りかけた。「汚れたタオルを顔に投げつけ、みんなの前で私を辱めた」

「今のお前はここに横たわっている。お前が必死で取り入ろうとしていた金持ちどもの手で殺されてな」

私は屈み込み、手袋をはめた手で水面に触れた。「お前も私も、奴らの玩具にすぎない」

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