第7章

翌日の夕方、私は川瀬ランドリーの仕事を終えた。

バス停に向かって歩きながら、手には催涙スプレーを握りしめ、周囲に視線を走らせる。昨夜、蓮司は家のドアの前に五分ほどいただけで立ち去った――だが、あれは警告だった。

奴はもう、私の正体に気づいたのだ。

不意に、黒いSUVが私の隣に停車した。後部座席の窓が下がる。

中に座っていたのは蓮司だった。サングラスをかけ、葉巻を歯の間に咥えている。

「乗れ」

誘いではない。命令だ。

頭の中でいくつもの選択肢が瞬く。

逃げる――蓮司の手下に捕まるだろう。

叫ぶ――ここは工業地帯で、夕方になると人通りが途絶える。

警察を...

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