第5章

森田理恵視点

「裕也!何してるの?降ろして!」

でも、彼は答えない。ただ私を抱きしめる腕に力がこもるだけ。ほとんど狂乱したような速い足取りで居間を抜け、高価なスーツの下で彼が震えているのが感じ取れて、それが何よりも私を怖がらせた。

彼は足で寝室のドアを蹴り開けた。その音は雷のように家中に響き渡った。

寝室は外の街灯から差し込む弱い光以外は真っ暗で、木製の床に長い影を落としている。裕也は私をベッドに降ろしたが、いつものような優しさはなかった。彼の動きにはどこか必死なものがあり、その何かが私の心臓を期待ではなく恐怖で速く鼓動させた。

彼の体が私の上に覆いかぶさり、両手が私の頭の...

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