第6章

森田理恵視点

「ここが、裕也が隠れてた場所ってわけね」

咲良のヒールが、鋭い破裂音のように木製の床を叩く。

「可愛い場所じゃない」

まるで家具を品定めするように、彼女はうちのソファの背を指でなぞる。その一つ一つの動きが計算され尽くした、捕食者のそれだ。

「IT企業の社長が囲ってる女の家にしては、少し狭すぎないかしら?」

「私の家から出ていって」

自分でも驚くほど、声は落ち着いていた。私はまだパジャマにローブ姿で、死人のような顔色をしているのに、彼女は雑誌の撮影にでも行くような格好だ。

「『私の家』?」彼女の笑い声が鋭く、冷たく響く。「森田さん、裕也が持ってるものは全部、...

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