第12章

「浅木様、お呼びでしょうか」

総裁室。桑野夜子はきっちりしたスーツ姿で立ち、伏せたまつげの奥に、どこか淡い冷たさを宿していた。

社内で二人が接点を持つことはほとんどない。加えて、意図的に関係を隠しているせいで、秘書を除けば、彼女と浅木辰也の間柄を知る者はいない。

だからこそ、いまの夜子の「業務としての顔」は自然だった。これまで社内では、ずっとこうして距離を保ってきたのだ。

けれど、それが浅木辰也の目には――夜子がわざと、自分を避けているように映った。

説明のつかない苛立ちが胸の底からせり上がり、彼は無表情のまま彼女を見据える。

その視線に晒され、夜子の背筋がぞわりと粟立った。

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