第25章

隣の席の二人は小声で言葉を交わし、場は穏やかで、笑い声さえ柔らかい。

「辰也、これ食べてみて」

フォークで刺した料理が、そのまま浅木辰也の皿へと運ばれる。

辰也は淡く頷いたが、食欲はあまりないらしい。視線は終始、背後の席の気配を追っていた。

鈴木真代はそれを見逃さず、箸を置くと頬杖をつき、含み笑いのまま口を開く。

「前はさ、あなたと夜子が離婚したら、夜子が一人で傷ついてるんじゃないかって心配してたの。でも杞憂だったみたいね。夜子って若くて綺麗だもの。放っておいても寄ってくる男、いくらでもいるでしょ」

浅木辰也の顔色が、露骨に曇った。

――

背中に刺さるような視線の存在感が強す...

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