第31章

桑野夜子は眉をぴくりと跳ねさせた。浅木辰也の疑うような視線を受けて、心臓がふっと持ち上がる。思わず否定が口をついた。

「違う!」

あまりにも反応が大きかったせいで、浅木辰也は思わず眉をひそめた。目を伏せるようにして彼女を見つめ、唇を引き結んで言う。

「お前さ、自分で思ってる以上に嘘が下手なんだよ。……なあ、もしかしてどこか悪いのか?」

具合が悪い――?

桑野夜子はきょとんとした。

けれど、浅木辰也が妊娠のほうにはまるで思い至っていないと分かった瞬間、胸を締めつけていた不安はすうっと消えた。すぐにいつもの調子を取り戻し、平然と答える。

「別に病気じゃないわ。考えすぎ」

浅木辰也...

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