第40章

桑野夜子は、入院してわずか一日で退院した。

妊娠のことは、あまり多くの人に知られるわけにはいかない。入院が長引けば長引くほど、余計な勘繰りを招きやすくなる。

もっとも、その退院を浅木辰也には伝えていなかった。

だからこそ、浅木辰也は病院へ顔を出し、桑野夜子がすでに退院したと聞かされた途端、すぐさま家へ引き返してきたのだった。

その頃、桑野夜子は穏やかな表情でお婆さんと話していた。慌ただしく帰ってきた浅木辰也の姿を見ても、まるで何事もなかったかのように、ごく自然な口調で問いかける。

「こんな時間にどうしたの? 今日は会社、忙しくないの」

浅木辰也はお婆さんを一瞥し、唇をきゅっと結ん...

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