第60章

夕食どき、桑野夜子は裏庭へ向かい、浅木お婆さんと一緒に食事をしていた。

二人が和やかに言葉を交わしていると、家政婦が小走りで入ってきて告げた。

「お婆さん、若様がお戻りになりました」

それを聞いた浅木お婆さんは、反射的に桑野夜子へ目をやった。だが、彼女はただ俯いたまま箸を進めているだけで、瞳に喜びの色はひとかけらもない。

浅木お婆さんは、はあと小さくため息をついた。

孫が不甲斐ないのは仕方ない。けれど、こんないい孫嫁をみすみす逃がすわけにはいかない。そう思って、すぐに人を呼び、椀と箸を増やさせた。

浅木辰也は部屋に入るなり、お婆さんの隣に座る桑野夜子の姿を見つけた。彼女はやわらか...

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