第61章

会社の健康診断の日だった。

桑野夜子が病院を出たところで、浅木辰也から電話が入る。

「検査、終わった? 今から迎えに行こうか」

ちょうど退勤ラッシュの時間帯。病院の周辺はタクシーもつかまりにくい。夜子は少し考えてから、頷くように返した。

「……うん、お願い」

それから30分も経たないうちに、浅木辰也の車が滑り込んできた。

夜子は意外に思いながら助手席のドアを開け、腰を下ろす。

「早くない? どうしてこんなにすぐ来られたの」

「電話する前から、こっちに向かってた。金曜はこの辺、タクシー拾えないだろ」

珍しいほどの気遣いに、夜子はかえって落ち着かない。

「……へえ」

淡く相...

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