第65章

ここまで縺れに縺れて、ようやく離婚できたのだ。喜ぶべきことのはずなのに――桑野夜子は、どうしても笑えなかった。

下津紗恵の家。リビングのあたたかな黄いろい灯りの下、夜子はラグの上に座り込んでいた。澄んでいたはずの瞳は、いまは薄い霧をかぶったみたいに揺れている。

紗恵が温めた牛乳を差し出し、自分は缶ビールを開けた。

「夜子は今、飲めないでしょ。だから私が代わりに飲んであげる。今日のムカつき、全部吐いて。私はあんたの感情ゴミ箱なんだから」

夜子は牛乳を受け取り、両手で包むように持った。しばらく黙ってから、かすかな声で言う。

「……私、ここを離れるかもしれない」

紗恵の喉が、ごくりと止...

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