第5章

 看護師長は顔を上げ、怪訝そうに眉を寄せた。「申し訳ありません。イヴリンというお名前の入院記録は、当院には一切ございません」

「なんだって?」ダニエルが声を荒らげる。「馬鹿な! 彼女は確かにここで手術を受けたんだぞ!」

 看護師の表情が険しくなる。「ですが……三十分ほど前、霊安室で身元不明の女性の遺体が発見されました。そのご遺体は……酷く腐敗しておりまして」

 ダニエルはその場に凍りついた。両手が制御を失ったように震えだす。喉が詰まったような感覚に襲われ、何か言おうとしても声が出ない。

 突如、彼は弾かれたように身を翻し、狂ったように霊安室へと走り出した。

 彼は霊安室のドアを蹴破...

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