第3章
「あんたとケイルが似た者同士だからよ」私は平然と言ってのけた。
「どっちも、あの埃まみれの古臭い掟の書を崇拝してるじゃない」
セラフィーンは一瞬動きを止め、それから鋭く鼻で笑った。
「高潔なふりをするのはやめて。自分がその座に相応しくないって分かっているだけでしょ。私が本当の花嫁だと気づけば、ケイルだって安心するわ」
「へえ?」私は小首を傾げた。
「ずいぶんと自信があるのね」
「当然よ」その言葉の端々から優越感が滴り落ちていた。
「私は掟に従っているもの。いつ黙るべきか、いつ祈るべきかを弁えているわ。でも、あなたは?」
彼女の視線が、私の頭の先から爪先までを舐め回すように動いた。
「あなたは野蛮で、躾のなってないただの野良犬よ」
前世の私なら、その言葉に打ちのめされていただろう。
だが今の私は、鏡に映った自分の姿に向かって吠え立てる子犬を見るような目で、彼女を見つめ返すだけだ。
「そんなに完璧なら」私は言った。
「どうして今すぐケイルに、自分が真のルナだって教えないの?」
彼女の顔が強張った。
「彼を驚かせたいのよ」
「それとも、本当は分かってるから?」私は言葉を続けた。
「いくら掟を守って祈りを捧げたところで、あんたの匂いは薄すぎて、本物のアルファなら一呼吸する前に飽きちゃうってことをさ」
「黙りなさい!」
私は肩をすくめた。
「落ち着きなよ。男を巡る子供っぽい競争になんて、これっぽっちも興味ないから」
彼女は私をきつく睨みつけた。私が本気で言っているのか、探りでも入れるかのように。
「せいぜい完璧に演じ切ることね。祭壇に立つのはあんたなんだから」
彼女は私の手首をピシャリと払い除け、足音荒く部屋を出て行った。
翌日の夕方、私は彼女が選んだ白いガウンを無視し、Vネックのドレスを着て晩餐会へと向かった。
『月光のワルツ』の時間が来ると、広間の視線は一斉にアルファへと注がれた。
ケイルは上座から、相変わらずの揺るぎない足取りで歩み出てきた。
彼は私に向かって真っ直ぐに近づいてくる――一瞬、このまま私の前で立ち止まり、「アルファと次期ルナがダンスの口火を切る」というあの馬鹿げた伝統を本当に果たすつもりなのではないかと思ったほど、すぐ近くまで。
だが彼は、手を上げると私の横を通り過ぎ、その奥へと手を伸ばした。
「セラフィーン」
彼の指先は、首元から顎までを淑やかに覆い隠した、白いサテンのドレスを纏う女へと向けられていた。
彼女はわざとらしくうろたえたふりをして俯き、彼の手を取った。
途端に、ひそひそ話が湧き起こった。
「レイヴンが契約上のルナじゃないのか? どうしてセラフィーンを誘うんだ?」
「彼女のあの格好を見てよ。この場への敬意が欠けてるわ」誰かが声を潜めたが、私の耳に届かないほどではなかった。
「こういう夜は、女は白いガウンを着るものよ。それなのにあんな姿で現れるなんて……あまりにも野蛮すぎるわ」
ケイルは自分の立場を隠そうともしなかった。彼は私をちらりと見た。
「どうせお前は正式なステップも知らないだろう。そこで見ていろ。気品とは何かを学ぶんだな」
そして彼は、セラフィーンをダンスフロアの中央へとエスコートしていった。
音楽が始まる。彼らの動きはまさに教科書通りだった――完璧な姿勢、完璧な距離感、完璧なライン。
1分も経たないうちに、私は完全に興味を失った。
私はグラスを手に取ると、一度も振り返ることなくその場を後にした。
外に出れば、私が何をしていようと気にする者など誰もいない。私はヒールを脱ぎ捨て、素足を地面に沈み込ませると、頭の中で鳴り響くビートに合わせて体を動かした。
オーケストラもない。掟もない。媚びを売るべき視線もない。
あるのは、私と、私自身の鼓動だけ。
それこそが、私の求めていた唯一のリズムだった。
「傷ついて、こんなところに隠れてるの?」
セラフィーンの声が、私の思考を切り裂いた。
「さっきのを見せつけられて、さぞかし嫉妬しているんでしょうね」彼女は心配そうなふりをして言った。
「現実は残酷なほどシンプルなのよ――アルファは常に、より相応しい方を選ぶの」
「嫉妬?」私は視線を上げて彼女を見た。
「あそこにいた二つの小道具に?」
彼女は私の言葉を無視した。
「どういう仕組みか、あなただってよく分かってるはずよ。どんなアルファの前に出たって、選ばれるのは私。ルナに必要なのは気品と従順さであって――呪われた目を持つ化け物じゃないの」
彼女は身を乗り出し、声を潜めた。
「あなたの母親が、私の母親に負けたのと同じようにね。今度はあなたの番よ、結末は同じ。敗北はあなたの血に刻まれているのよ」
胸の奥で、カッと熱いものが込み上げた。
よくも私の母親を引っ張り出してくれたわね。
「私の母について、もう一言でも――」
言い終わるよりも早く。
セラフィーンは突如として完璧な高さの悲鳴を上げると、後ずさりし、「足を滑らせて」背後のプールへと派手に落ちた。
晩餐会は騒然となった。
「セラフィーンが落ちたぞ!」
真っ先に駆けつけたのはケイルだった。彼は躊躇うことなく水に飛び込み、彼女を引きずり上げた。
彼女は震えながら彼にすがりついた。
「ケイル、私、すごく怖かった……。レイヴンが……私が彼女の場所を奪おうとしてるって……」
彼は私を見上げた。
その瞳はすでに赤く染まり、アルファの放つ濃厚な怒りが辺りの空気を支配していた。
「なぜ彼女を突き落とした?」その声は静かで、致命的なほどに冷酷だった。
「指一本触れてないわ」私はその場から動かずに言った。
「謝れ」彼は私の言葉を遮った。
「今すぐ。跪いてだ」
私は短く鼻で笑った。
「銀でも飲んだの? 私は突き落としてない。嘘のために謝るつもりはないわ」
「お前はこの群れの次期ルナだ。だからこそ、これ以上掟を踏みにじることは許さん」一言一言が短く切り裂くように放たれた。
「今後、お前が道を外れるたびに、俺がそれを叩き潰す」
彼のベータであるスローンが、すでにその傍らに控えていた。
「アルファ?」
「彼女を『月の泉』へ連れて行け」ケイルは金属のように冷たい声で命じた。
「3時間の浄化だ。今すぐ始めろ」
私が動くよりも早く、背後から腕をガッチリと拘束された。
「よくも――」言いかけた途端、手首を捻り上げられ、体を押さえつけられた。
『月の泉』は刃のように冷たく、銀が混ぜ込まれており、従順でないルナを「浄化」するために作られた場所だった。
彼らは私の頭を水中へと押さえ込んだ。
最初に飲み込んだ氷水が、ガラスの破片のように私の胸を切り裂いた。
肺が焼けつくように痛み、必死に掻きむしるようにして水面へ上がり、辛うじて息を吸い込んだのも束の間、再び無慈悲な手が私を水底へと沈めた。
一度。二度。そして何度も。
「ケイル、この狂犬――」
押し寄せる水が、残りの罵倒を喉の奥へと押し戻した。
「続けろ」ケイルは冷徹に言い放った。
「そうでなければ、決して学ばない」
何を学ぶって?
奴らの望む従順な形になるまで、自分自身をすり潰す方法をか?
彼は「ルナを教育」しているのではない。服従を拒む狼を矯正しているのだ。
白熱するような痛みが全身を駆け巡り、私の呼吸を奪い去っていく。
私はきつく目を閉じた。
そして、すべてが暗闇に沈んだ。
