第101章 人妻が好きだ

金縁の眼鏡が大理石のテーブルに当たり、澄んだ音を立てた。背後の気配に気づいた有川紘樹が振り返ると、佐伯薫がゆっくりと階段を下りてくるところだった。

「紘樹、遅くなってない?」

いつもの佐伯薫は清楚な装いが多い。けれど今日は、膝丈の黒いタイトドレス。体の線をほどよく拾うその一着に、有川紘樹の目がかすかに見開かれた。

「いや。行くぞ」

クラブ・エンペラー。

有川紘樹は佐伯薫の手を引き、そのまま最奥の個室へ向かった。クラブマネージャーはひと目で彼の顔を見分け、すぐさま愛想よく前へ出る。

「有川社長、お久しぶりです。石井様でしたら、もう中でお待ちです」

まだ入る前だというのに、扉の向こ...

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