第30章 謝ったら手を引け

佑奈は前だけを見据え、連中に二度と視線をくれてやらないまま、オフィスへと駆けた。

ドアはきちんと閉まり切っていない。

隙間から覗くと、佐伯薫がデスクの前に立ち、湯気の立つカップを手にして身をかがめ――有川紘樹の目の前へ、そっと置くところだった。

「お茶でも飲んで。ずっと午前中、忙しかったでしょう。少し休まないと」

有川紘樹はふっと目を上げ、カップを受け取り、一口。

「……うん。悪くない」

佐伯薫が微笑む。柔らかく、甘い目で彼を見つめた。

「気に入ってくれてよかった」

薫はそのまま彼の傍に立ち、黙って書類に目を通す有川紘樹を見守り続ける。離れる気配など、最初からない。

佑奈は...

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