第35章 わざとつまずかせる

佑奈はゆっくりと拳を握りしめた。

周りを見れば、先生の声かけに従って、ほかの保護者たちはすでにプロテクターを身につけ始めている。

このあと行われる親子イベントはサッカー。子どもと保護者が混ざって、いくつかのチームに分かれて試合をするらしい。

自分が出なければ、この場は一人足りなくなる。

佑奈は数秒沈黙し、結局ベンチに腰を下ろした。

最後まで、佐伯薫に視線を一度もやらないまま。

装具をつけ終えるころには、園庭ではもう試合の準備が整っていた。

ピッ――。

笛が鳴り、ゲームが始まる。

子どもたちは勢いよくボールを追い、保護者はその後ろを走って、転んだりぶつかったりしないように見守...

ログインして続きを読む