第38章 5億元が必要だ

有川紘樹の態度が胸に刺さったのか、と問われれば――。

いいえ。有川紘樹がずっと佐伯薫を信じてきたことなど、佑奈はもう慣れっこだった。

たぶん、いちばん堪えたのは今日、有川菜央が迷いなく佐伯薫へ駆け寄っていった、あの瞬間。

ただ、心が冷えただけ。

十月十日お腹で育て、手で抱いて大きくした子だ。熱を出せば、自分が代われるなら代わりたいとさえ思ってきた。

それで返ってきたのが、この仕打ち。

恩知らず――これ以上の言葉もない。

運転席の小林圭吾がバックミラー越しに、顔色を失った佑奈を見て、目に痛みを滲ませた。

「今は他に誰もいない。泣きたきゃ泣け。弱いなんて笑うやつはいないから」

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