第48章 彼女の好みが分からない

そのとき、店員がメニューを差し出しに来た。

有川紘樹はそれを受け取るなり、佑奈には視線ひとつ寄越さず、さっさと注文を始める。

「松茸の土瓶蒸し。鮑の柔らか煮。それと鯛の荒炊き、海老とアスパラの塩麹炒めも」

言い終えると、彼はようやく佑奈をちらりと見た。

「お前、あっさりしたのが好きだっただろ」

佑奈は、一瞬だけ言葉を失う。

佐伯薫の表情も、わずかに引きつった。

――滑稽だ。

佑奈は薄味が好きじゃない。味気なくて嫌いだ。土瓶蒸しの松茸なんて、むしろいちばん苦手。

紘樹が口にした料理は、どれもこれも、佑奈の好みとは程遠い。

結婚して六年。自分が何を好きで、何を嫌うのか。夫は何...

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