第129章

一同はぽかんとした顔で、目の前にふいに現れた男へと視線を揃えた。

だが藤原雅彦は涼しい顔で、肩をすくめてみせる。

「江口夫人、永橋夫人。奇遇ですね」

江口夫人は藤原雅彦に悪い印象を持っていなかった。藤原家の中でまともなのは、藤原芳美と藤原雅彦の二人だけ――そんなふうにすら思っている。

だからこそ、ぱっと表情を明るくして駆け寄った。

「まあ、雅彦くん来たの? ほら、こっちこっち。座りなさい」

藤原雅彦は遠慮するどころか、やけに丁寧に江口夫人の腕を支え、席へと導く。

「さっきまで近くで取引先と話していまして。ちょうど陽向から電話が来たんです。江口夫人と永橋夫人もこちらにいらっしゃる...

ログインして続きを読む