第089章

菅田有紀は、ぱちりと目を見開いた。

帰国してからというもの、藤原行船はほとんど彼女の言いなりだった。何百万もする宝飾品だって、眉ひとつ動かさずにそのまま贈ってくれた。

それなのに今さら、少し借りるだけのジュエリーを断るなんて。

まさか、前のネット動画の件で、自分を疑い始めたのだろうか。

けれどあのときは、病院でちゃんと説明したはずだ。あれは全部、彼と鈴木知英の鬱憤を晴らしてやりたくて、菅田友香にきつい言葉をぶつけただけだと。

そして彼も、その説明には納得していた。

ただ、気のせいかもしれない。

それでもここ二日ほど、藤原行船の態度が前ほど熱心ではないような――そんな薄ぼんやりし...

ログインして続きを読む