第096章

藤原行船は、はっと我に返ったように菅田有紀を見た。

「……ああ。似合ってる」

その上の空な返事で、藤原行船の気持ちがどこにも向いていないことを、有紀はすぐに見抜いた。

さっきまで胸いっぱいに広がっていた喜びが、すうっと冷えて沈んでいく。

有紀はそっと探るように尋ねた。

「行船お兄ちゃん……もしかして、お姉ちゃんのことが心配なの?」

藤原行船は肯定も否定もせず、ただ小さく息をついた。

「離婚の手続き完了まで、もうあと十数日しかない。なのに、どういうわけか……俺たちの関係は、前よりひどくなってる気がする」

有紀は服を抱く手にきゅっと力を込めたが、次の瞬間にはやわらかく笑って彼を慰...

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