第309章

岩崎奈緒は、彼女の視線がずっと自分の首筋を彷徨っているのを感じ、少し訝しんだ。

「どうかなさいましたか?」

藤原美咲は慌てて視線を逸らし、どもりながら言った。

「い、いえ、なんでも。お加減はいかがですか?」

昨夜は泣いていたみたいだけど?

兄さんったら、まさか……。

岩崎奈緒は少し不思議に思ったが、ふっと笑みをこぼした。

「少し体調が優れないだけです。でも、我慢できる範囲ですよ」

藤原美咲の顔が、さらに赤くなった。

「それなら、よかったです」

岩崎奈緒はドアを閉め、新しい服に着替えて外に出ると、藤原美咲がまだそばで待っていた。

彼女と一緒に廊下の反対側へ歩いて行くと、服...

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