第321章

渡川勝子自身がZ郡の出身で、末っ子の家には息子が二人も生まれ、しかも出来が良かったものだから、彼女が末っ子の肩を持つのは当然だった。

長男が当年、林田美春を嫁にしたいと言い出した時、彼女は反対した。あの女は尻が小さく、一目で子に恵まれそうにないと思ったからだ。

その件で長男と一度口論にもなったが、結局は彼の頑固さに負けた。

ところが結婚してみれば、林田美春は結婚式を挙げる前から妊娠していたことが判明し、渡川勝子は怒りで地団駄を踏んだ。

林田美春が妊娠していると早く知っていれば、六十万円の結納金も節約できたのにと、その日の晩に彼女は林田美春をこっぴどく罵った。妊娠を隠していただけでなく...

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