第338章

まるで自分の妻の実家が大変なことになったのではないかというほど、冷静な表情だった。

井上進は思わずため息をついた。やはり社長は、奥様のことを快く思っていないらしい。

まあいい。今後、社長の前で岩崎家の話をするのはやめておこう。

「社長、お爺様からも二度ほどお電話が。萩原さんとお会いになったかどうか、お尋ねでした」

藤原おじい様は、萩原初をひどく警戒している。

藤原光司は井上進から契約書を受け取ったが、おじい様が警戒すべきは他の人物だろう、と思った。

その『他の人物』が誰なのか、彼には心当たりがあった。

藤原光司は毎日会議に追われており、会議中でなければ、会議へ向かう途中だった。...

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