第341章

藤原光司の足がぴたりと止まる。どういうわけか、むかっ腹が立った。

デザイナーになりたいとあれほど必死に手管を尽くしてきたくせに。

今度はもういいと、ためらいもなく蹴り飛ばすとは。

岩崎奈緒は彼が立ち止まったことに気づかず、ブレーキが間に合わなかった。鼻先が彼の背中に直接ぶつかり、じんとした痛みが走る。

「理由は」

彼の声に抑揚はなかったが、普段よりずっと冷たかった。

「いつも萩原家の姉妹に面倒事を起こされるので、次も今日みたいに運がいいとは限らないと思いまして」

それは彼女の本心だった。

もし萩原彩花が襲ってくるたびに、こうも簡単に保釈されるのであれば、自分の命がいくつあって...

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