第342章

道中、会話はなかった。車はバラガーデンで停まる。

岩崎奈緒はドアを開けて降りようとしたが、何かを思い出したのか、動きを止めて座り直した。

「藤原社長、もし今後、萩原初がまた私に何かしてきたら、また藤原社長に言いつけてもいいですか」

彼女は「言いつける」という言葉を、さも当然であるかのように口にした。

なにせ岩崎家は萩原家には及ばず、藤原家にはなおさら及ばないのだから。

萩原初は彼の恋人だ。彼の威光を笠に着て、将来はもっと色々なことができるだろう。

藤原光司は彼女を見つめ、数秒黙ってから問いかけた。

「なぜ俺がお前の側に付くと?」

「私の側に付くのではなく、正義の側に付くという...

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