第344章

だから彼はどうにも信じられず、騙されるといけないから行かないようにと老夫婦を説得したが、二人がどこからその情報を得てきたのかは知らなかった。

しかし、老夫婦は数時間出かけた後、本当に六千万円を持って帰ってきたのだ。

岩崎雄二は銀行へ返済に行った時も、まだ信じられない思いだった。

三十年の住宅ローンが一気に完済され、なお数百万円も残ったのだ。

「母さん、繰り上げ返済の申請が通って、銀行から引き落とされたよ。これからは毎月ローンを返さなくていいんだ」

渡川勝子の目は興奮に輝き、やがてそれは貪欲な光へと変わった。

「雄大のところは今じゃ大儲けしてるのよ。六千万を瞬きもせずにポンと出すん...

ログインして続きを読む