第352章

岩崎奈緒は驚きのあまり、その場に固まってしまった。もしユキが山暁にいることを知らなければ、彼の言葉を真に受けてしまったかもしれない。

藤原光司が犬一匹を捕まえてどうするというのか?

彼女は呆れてしまい、慌てて後を追った。

「藤原社長、私のユキが確かにいなくなってしまったんです。見間違いではないかもしれません。どこで見かけたのでしょうか、探しに行きますので」

藤原光司の足が止まる。彼は白いシャツに黒のスーツを纏い、引き締まった顎のラインをわずかに強張らせ、冷たい声で言った。

「お前の主人と一緒に探してみろ。そうすれば見つかるかもしれん」

岩崎奈緒は言葉を失い、足を止めた。

藤原光...

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