第354章

岩崎直樹は苛立ち紛れに車の窓を殴りつけ、窓ガラスは粉々に砕け散った。

運転していたのは鈴木蘭で、彼女は悲鳴を上げた。

「黙れ!」

岩崎直樹の目は依然として赤く充血しており、荒い息を繰り返している。

「岩崎家からいくら金をせしめようが知ったことか。今欲しいのは岩崎奈緒だ!」

鈴木蘭はぶるりと震え、ハンドルを固く握りしめた。息子がどこか偏執的になっているのがはっきりと感じ取れる。

すべては、あの岩崎奈緒という性悪女のせいだ。

「直樹……」

彼女はおずおずと呼びかけたが、岩崎直樹は彼女を一瞥だにしなかった。

鈴木蘭はそれ以上何も言えなくなったが、その顔には明らかに焦りの色が浮かん...

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