第355章

峠道は夜になると若者たちのレース場と化す。カーブは狭く、急だ。

先ほど岩崎奈緒がこの道について話した際、岩崎直樹がかつてここでレースをするのが好きだったと、一言付け加えていた。

その言葉の裏には、もし事故が起きても自業自得だという意味が込められていた。

運転手はすぐに彼女の意図を察し、立て続けにいくつかのカーブをドリフトで抜けた。

岩崎直樹は目を赤く充血させながら加速し、車がどんどん人気のない方へと向かっていくのを見て、狂ったように笑いたくなった。

この岩崎奈緒という女、本当に命知らずだ。今は市街地からこんなに離れている。停車させさえすれば、それは自分が手を下す絶好の機会となる。

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