第367章

案の定、中の藤原光司と宝科社長、さらには松岡和人の姿を目にした途端、彼女は眉根をきつく寄せた。

本物の夫と、偽物の夫が…まさか同じ部屋に鉢合わせるなんて。

彼女は途端に頭が痛くなってきた。

しかし森野昇は彼女の手を取り、そのまま吉原太一のそばまで歩いていく。

「吉原社長、向かいの部屋があなただと知っていたら、もっと早くに来るべきでしたよ。人に聞いてみて幸いでした」

吉原太一は松岡和人が藤原光司の物を失くしたことで苛立っていたが、森野昇が来たことで、いくぶんか顔色も良くなった。

「森野社長、ペニー、よかったら座って一杯どうです?」

森野昇はまた藤原光司に気づく。「藤原社長と萩原さ...

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