第371章

藤原家にとって、彼女はずっと取引の品物でしかなかったようだ。

藤原光司は動きを止め、その唇で彼女の耳元を艶めかしくなぞった。

「お前のあの甲斐性なしの亭主は、一体何の役に立つ?」

岩崎奈緒は睫毛を伏せ、どうして自分のことをそんなふうに罵れるのかと思った。

藤原光司の手が彼女の腰に回される。

「ペニー、考えは決まったか?」

彼の言葉は、甘い毒を含んだ罠そのものだった。彼女をこの沼地へと引きずり込もうとしている。

岩崎奈緒が返事をしないと、彼はそれを同意と見なし、彼女の体をひょいと抱え上げた。キスをしながら、消毒済みのテーブルの上に乗せる。

岩崎奈緒は彼のキスで息もできなくなり、...

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