第378章

岩崎雄大は顔面蒼白で書類を置き、振り返ると、少し離れた場所に立つ人影に気づいた。

彼は傍らの杖を取って立ち上がろうとする。

しかし、手がひどく震え、まったく力が入らない。

岩崎奈緒も動かなかった。少し前まで自力で歩けていた父が、今や杖に縋ってもおぼつかない様子だ。

彼女は口を開きかけたが、何を言うべきか言葉が見つからなかった。

岩崎雄大もただ彼女を見つめ、やがてゆっくりと腰を下ろし、力なく杖を横に置いた。

彼の目尻には、急に多くの皺が刻まれていた。もともと五十代という年齢に加え、白髪頭のせいで、岩崎奈緒はまともに彼を見ることすら憚られた。

「奈緒、岩崎家は終わりだ」

そう口に...

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