第385章

岩崎奈緒は隣に目をやった。森野牧が看護師に事情を説明しているところだった。

「私たちは彼の友人なんですが、容態はどうなんです?」

「脳震盪の可能性がありますので、経過観察が必要です。詳しいことは医師の診察を待たないと分かりません。皆さんはこちらでお待ちください」

森野牧が傍らの椅子に腰を下ろす。彼の服にはまだ血痕がついていた。

岩崎奈緒は小切手を一枚取り出し、四百万円と書き込んだ。

「森野牧、これは松岡和人の治療費よ。足りるか分からないけど、今ちょっと急用ができて、もう行かなくちゃいけないの」

森野牧はその小切手に一瞥をくれると、目に軽蔑の色が浮かんだ。金持ちというのは、こういう...

ログインして続きを読む