第388章

藤原光司は傍らの書斎机に腰を下ろし、再び書類を手に取った。

「何の用だ」

「天川光輝の絵が近々オークションに出るそうよ。北米まで行かれるかしら。あなた、天川先生の絵がお好きでしょう?もし行かれるなら、私も一緒に連れて行ってくれない?」

萩原初は甘えるような口調でそう言うと、テーブルの上の食事に目をやり、ゆっくりと腰を下ろした。

「ちょうどよかったわ。私もまだ食事を済ませていないの。一緒に食べましょう」

しかし、藤原光司の視線は書類に落ちたままだった。

「また今度だ」

「光司、あなたが天川先生の作風を好きだから、私はわざわざ海外まで飛んで、彼に弟子入りしようとしたのよ。でも、先生...

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