第393章

岩崎奈緒はほっと息をつき、その目には安堵の色が浮かんだ。

ともあれ、これで一件落着だ。

その時、岩崎雄大から電話がかかってきた。彼はただ興奮した声で一言、「奈緒……」と叫んだ。

それ以上の言葉は、どうしても出てこなかった。

あまりの衝撃に、目の前が何度も暗くなるほどだった。

「お父さん、もう大丈夫だから。ゆっくり休んでて」

岩崎雄大は口を開いたが、その中は苦い味でいっぱいだった。

一分ほど落ち着いてから、彼は尋ねた。「藤原光司か?」

「うん」

岩崎雄大は黙り込んだ。藤原光司は奈緒に何の感情もないと思っていた。それなのに、岩崎家の事業を一度は妨害しておきながら、今度は破産の危...

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