第397章

彼の身体は、すでに熱を帯びていた。

岩崎奈緒は慌てて身を起こそうとしたが、また彼に押さえつけられてしまった。

彼女の指先が彼の髪を掠める。髪はまだ湿り気を帯びており、シャワーを浴びたばかりで、乾かさずにそのまま出てきたのだろう。

岩崎奈緒もシャワーを浴びた後だったが、髪はすっかり乾いており、肩の後ろに流しているせいで、手のひらほどの小さな顔が覗いていた。

彼女はようやく、藤原光司がなぜ管理会社の人間にあのように言わせたのかを理解した。

藤原光司にとって、自分は既婚者という設定だ。そして彼は、自分が松岡和人と一緒にいると確信している。だから今、彼の認識の中では、松岡和人は家にいること...

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