第409章

ハンドルを握る岩崎奈緒の指先が、きゅっと固く締まった。一枚のドアを隔てて、彼女の顔は真っ赤に染まっている。

藤原光司は彼女を解放した。

岩崎奈緒は何も言わず、ただ少し狼狽した様子で前方を見つめている。

「ペニー」

「はい?」

「旦那との離婚を考えろ」

岩崎奈緒は夜風が少し肌寒いと感じるだけで、返事はしなかった。

彼女からの答えを待っていた藤原光司の瞳から、少しずつ光が消えていく。

数分後、岩崎奈緒は彼の方を振り向き、冷静な口調で尋ねた。

「藤原社長は、どうしてそのようなことをおっしゃるのですか?」

頬はまだ彼のキスで上気したままだったが、その瞳は驚くほど平坦だった。

そ...

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