第152章 彼と一緒に食事する

エレベーターの扉が閉まった瞬間、空間がすっと静まり返った。

笠原灯は篠原霧音の右隣に立ち、つい横目で彼女を追ってしまう。

今日の霧音は、生成りのシャツ。袖口は手首の少し上まで無造作にまくられていて、白く細い腕がわずかに覗いていた。髪は低い位置でひとつに結ばれ、耳元に落ちた後れ毛が数本、雨上がりみたいに柔らかい。

化粧はしていない。それなのに、血色がやけにいい。

灯の視線は、彼女の頬から顎へ、さらに首筋へと滑っていく。

痩せたどころか、頬は笠原家にいた頃より少しふっくらしていた。尖っていた輪郭も丸みを帯び、全身から、骨の奥までほどけたような「楽になった」空気が滲んでいる。

――結婚...

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