第45章

「無理」

篠原霧音は、きっぱりと言い切った。

スプーンを置き、顔を上げる。古川司真を真正面から見据えた瞳は、驚くほど澄んでいた。

「せっかく借りられた部屋なのに、あの人が一回来たくらいで、どうして私が引っ越さなきゃいけないの」

古川司真が、わずかに目を見開く。

霧音は口元を引いた。嘲るような笑み――けれどそれは、古川司真に向けたものではない。

「前は、避けてた。自分が甘くなるのが怖かったから」

スープの表面を、くるりと混ぜる。声音は淡々としている。

「でも、今は違う」

「私がどこに逃げても、笠原灯がその気なら見つける。だったら、こっちが無駄に消耗するだけじゃない」

「来た...

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