第49章

笠原灯は、その場で凍りついたみたいに動けなくなった。皮膚の下から、じわりと冷えが這い上がってくる。

「……俺は、そんなこと言ってない」

掠れた声で吐き出すと、彼は慌てて篠原霧音の腕を掴もうとして、言い訳を並べ立てた。

「俺、その日お前が電話したなんて知らなかった。どうして俺が、そんな返事をさせるんだよ。奈々だって俺の娘だ。いなくなったら焦るに決まってるだろ。俺は……」

篠原霧音は身を引き、彼の手をするりと避けた。

「もう、どうでもいい」

真偽を見分ける気すらない、そんな温度の声だった。彼女は離婚協議書を取り上げ、またベッドサイドへ置き直す。

「それ、あなたのスマホでしょう。あの...

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