第61章

曽我美蘭は奥歯をぎり、と噛みしめたままオフィスへ戻ってきた。篠原霧音のいる方へちらりと目をやる。その視線には、さっきまでとは違う、妙な強気が混じっていた。

先ほどまでのあのいきがった態度は、まるで頭から冷水をぶっかけられたみたいにきれいさっぱり消えていた。余計なひと言も口にせず、そのまま自分の席へ引き下がる。

けれど椅子に腰を落ち着ける間もなく、PCの右下に一斉送信メールの通知がぽん、と表示された。

全社員宛て。

人事部課長がさっき彼女に見せていた、あの明文化された社内規定そのものだった。

この時点をもって、社内において篠原霧音と古川司真に関する話題を口にすることを禁ずる――。

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